きみのそら ぼくのそら

姉との生活の様子を綴ります

ネネカママとスパゲティ

ある夏の昼下がり、僕はネネカママの研究所で教育を施されていた。

「四則演算も詰まることなくできていますね。では、そろそろ昼食を摂りましょう。」

食材が少ないですし、簡素なものにしましょうと言って、ママはスパゲティとレトルトのパスタソースを取り出した。

「ミートソースを食べたことはありますか?」

僕は首を縦に振って答える。僕の味覚が未熟であるのに考慮して、子供向けのソースを選んでくれたようだ。

「以前、あなたは酸味のあるトマトを食べられましたね。味覚は味蕾、即ち肉体と結びついているので、精神年齢とはあまり関係がありませんが……ともかく、トマトを食べられたというのは褒めるべきことでしょう。偉いですね。」

ネカママは僕の食生活も管理してくれているのだ。ママに拾われるまで、僕の食生活は荒に荒んだものだった。毎日のラーメンと、そこでの多量のニンニクの摂取。味覚はズタズタに破壊され、五臓六腑は悲鳴をあげていた。生活習慣病に向かって直進していた僕を止めてくれたのは、ママの栄養バランスのとれた食事だったのだ。

ママは大陸全土から選りすぐりの食材を集め、単に美味で栄養豊富な食事を作るだけでなく、僕に苦味や渋み、酸味などの、幼児が苦手とするような感覚を学習させてくれた。おかげで僕は、毎日の食事を楽しむ余裕を得られた。

そして僕は、少しずつ簡単な調理を教えてもらっていた。先日は卵焼きのレシピを学んだ。と言っても、焼く過程で失敗し、完成したそれはスクランブルエッグと呼ぶべき一品であったのだが。そんなわけで、僕はパスタソースの加熱をしたいと提案した。

「やってみるといいでしょう。お湯の沸かし方は分かりますね?そこに袋を入れるのです。」

鍋に水を張り、沸騰させる。ここまでは難なくできた。ところが、ソースの袋をお湯に入れた瞬間。「!!!!!」お湯をはねさせてしまい、僕は火傷してしまったのではないかとパニックになった。僕は急いでバケツに水を汲み、それを頭からかぶった。火傷の対処にはこれが最適だろうと、焦りで働かない思考がそう結論を出したからだ。

「落ち着きなさい。それでは風邪をひいてしまいますよ。シャツを替えますから、腕をあげなさい。ほら、万歳。」

ネカママはびしょ濡れのシャツを脱がせ、新しいシャツを着せてくれる。

「調理は大丈夫ですから、火傷の患部にこれをあてがいなさい。」と氷嚢を渡された僕は、席について料理を待つことになった。

「完成です。どうぞ、召し上がれ。」

僕は犬のようにスパゲティを食べ始めたが、そんな駄犬にママが「待て」の指示をかける。

「スパゲティはフォークに巻きつけて、音を立てずに食べるのが作法ですよ。」

ママの真似をするが、なかなか巻きづらいうえ、一口の量も減って焦ったい。しかし、作法は作法。言われた通りに食べ進めていく。うん、おいしい。が_______

「あ」

ママが珍しく素っ頓狂な声をあげる。視線の先には、僕の胸元。白のシャツにミートソースが飛び散り、シミを作っている。

「いけませんね。私としたことが、そこに考えが及んでいませんでした。」

ママは再び僕に万歳をさせ、服を脱がせた。

このことがあってから、僕は脱衣するときにママに万歳をせがむようになった。